夫婦で営む日向市の実力居酒屋。

JR日豊本線日向市駅から歩くこと3～4分、八幡通り近くの袋小路に至福の百名酒場(これのり)がある。
「いらっしゃいませ、お飲み物は何にしましょう」
女将さんが声をかけた。
「木挽のオンザロックね」
宮崎に来たら焼酎だ。
九州は焼酎の故郷。
鹿児島の黒豚、宮崎の地鶏、熊本の馬刺など、地酒と地場料理はやはり結びついているのである。
スー……。
地元宮崎の「木挽」はキレのある甘味の爽やかな芋焼酎だ。
おすすめ料理に「若あゆの塩焼/みそ焼」がある。
鮎の字を見ただけで気持ちがときめく。
川の女王。
「若鮎のような」はピチピチした娘の形容詞だ。
夏の清流をしなやかに体をくねらせて泳ぐ姿を想像するだけで若い色気を感じる。
北大路魯山人は京都の活き鮎を川水に泳がせ、早飛脚で東京に届けさせたという。
自家製味噌を塗り炉で焼き上げた「若あゆ みそ焼」は、いい匂いのする熱々の焦げ味噌がよく合ってたいへんうまい。
鮎の醍醐味は腹に抱くワタのすべてを一口で食べるところにあり、香味、旨味、脂味、苦味、かすかな血の味、皮の焦げ、自家製味噌味が渾然となった風味は、川魚の泥臭さが全くない鮎だけの気品だ。
日向沖の深海に生息するメヒカリ【アオエメソ】の唐揚げは脂の旨みが濃厚でとてもうまい。
料理はどれも非常によい。
またその盛り付け。
飲み屋街のはずれの何気ない場所に黙ってこれだけの料理を出す店がある。
値段も良心価格。
日向市にはひっそりとレベルの高い店があることを改めて感じた。

★メニュー表★

若あゆ みそ焼500円
いわし尾引き550円
地だこ刺身750円
ひらめ刺身850円
ひらめうす作り900円
とらふぐヒレ酒700円